20.完全に止まってしまった父
術後、歩行は不可能と言われていたにも関わらず、歩行ができるようになった父。
足についていたうっ血防止の機械は卒業。
栄養状態のバランスの管理は点滴がしてくれている。
12月後半から2月くらいまでの父の記憶はありません。
父から聞ける話はありません。
ポツポツと何かがこぼれ落ちるかのような・・・
手にすくった水がじわじわとなくなってしまうかのように父に異変がおこりだしました。
はじめに気がついたのは母でした。
父が送ってくるメール。
空メールだったり、言葉ではないものが届いたり、
話をしていても上の空。
それがずっと続くわけではなくポツポツ・・・と。
あれ?なんかいつもと違うくないかな?
どうかな?程度でした。
年があけ、1月5日父の誕生日。
母の携帯に看護師さんから電話がありました。
”すぐ来れますか?”
片道2時間ほどかかるところだ。
看護師さんの急なお願いに母は車を飛ばして父の元へと向かった。
到着していたころには薬でおとなしく寝ていた父。
看護師さんから話を聞くと、急に暴れだし、チューブなどすべて力づくで抜き出した。
体格のいい看護師さん数名でやっと取り押さえた。とのこと。
眠る父をみて母はそっと手を握りました。
これから始まる悪夢との戦いは、もう”癌”の存在なんて忘れてしまうくらいの出来事の始まりでした。
そして長い長い父の闘病生活が始まったに過ぎなかったのです。