父と癌 

がんになった父の闘病生活の記録です

18.父の友人・父の戦友

なんだかんだで部屋を移ることとなった父。

その病室で新しい出会いがありました。

”どうして移動になった??”

そう聞いてくれたのは見るからに身体のごっついオッサン。

父は笑いながら

”やかましいやつおって文句言うたら俺が追い出されたわー”

なんていうと、その身体のごっついオッサンが

”あぁ、あいつか!あいつわがままやし世間知らずや!この部屋に居ったけど俺が追い出したったんや笑”

と二シャリと笑った。

お互い顔を見合わせてニシャリと笑っていた。

”お前かーハズレくじ回しやがって~俺が追い出されたんやぞー?!”

なんて笑いながら話は弾む。

次第に母の話や、家族の話、家の庭の話とか、お互い話すうちにいつの間にか時間が過ぎていた。

父の新しくできた友人は、がんセンターに入院中なわけで。

この方もやはり癌なのである。

父の友人は、完治は無理らしく放射線治療を気休め程度にしているらしい。

トイレに行くのも看護師さんが必ず付添、車椅子か歩行器。

”俺な、いつ死んでも不思議ではない状況だけど、Yさんは必ず治ると信じて諦めずに治しなよ。癌になんて負けたらだめですよ”

と父にふと言ってくれたそうです。

この方の言葉は今でもずっと背負っていかなければならないと。

自分も癌でしかも治らない。その状況で他人に負けるなよって。そんな言葉をかけてくれるなんてこと、もしも逆の立場だったら言えていただろうか・・・・

自分のことが一番可哀想と、逆にYよ、お前はいいな。治るんやろ?とブラックな発言をしてしまうのではないのか。

父は涙が零れそうになったと言います。

父とこの身体のごっついおじさんが仲良くなった話は看護師さんたちの間ではかなりその時のビックニュースになっていたそうです。

今まで誰とも話すことすらしなかったオジサン。

それが笑って父と話している。

信じられない!!と看護師さんたちは嬉しそうに話してくれていたそうです。